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好きなものに囲まれたシンプルな生き方を

小説が好きな人におすすめの読書方法 その1

読書が好きな人におすすめしたい、小説の読み方があります。それは、ひとりの作家の作品を系統立てて、一から順番に最後まで読み通すというもの。もし気に入った作家がいたら、その人の作品を出来るだけ順番通りに、初期の作品から読んでみることです。


系統立ててしっかり読み込んでいくと、作品に対する理解は格段に深まります。それはもう、驚くくらい。作家独自のクセのようなもの、そこに描かれていない作家の思想を、行間に読むことができるようになります。

 

 

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先日、本屋で何気なく村上春樹の「女のいない男たち」の文庫本を手に取りました。私はもともと自称ハルキストなので、作品はすべて目を通しているのですが、文庫本をパラパラと立ち読みしたところ、思いのほか内容を覚えていなかった。即買いです。ちょっとショックだったんですよね。それで再読しようと思いました。


考えてみれば、村上作品の後期に関しては、あまり読み込んでいませんでした。出版直後に一度読んだだけで、そのままにしている作品が多かった。たまたま手に取った「女のいない男たち」を読んでみてかなり面白かったので、これを機会にまたちょっと真面目に再読しようと、文庫になっていた「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」も購入しました。


単行本だと重たいので、何なら文庫も全部揃えてみようかな、なんて軽い気持ちで読み始めたのですが、やっぱり村上春樹って面白いんですよね。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」なんて初版が出たときはそんなに熱心に読んだ記憶がないのですが、再読したらまあ面白いこと。好きな人には分かると思いますが、村上作品には不思議なドライブ感があるんです。なんでこんなに続きが読みたくなるのか、理由が明確に分からない。分からないんだけど、ページを繰る手が止められないんですね。

 

 

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で、「女のいない男たち」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」ときて、次は何を読もうかなと思ったんですが、この流れで長編の「1Q84」「騎士団長殺し」を再読することに決め、一旦「海辺のカフカ」を挟むことにしました。長編つながりで。


海辺のカフカ」はこれまでに何度か読んでいるのですが、今回は久しぶりの再読でした。そしてまあびっくり。今でも新たな発見があるんですよねー。本当に村上春樹は底なし沼。他の作品とつながる流れを辿りながら、楽しんで読むことができました。


はじめに、初期作品から順に系統立て読むことが良いんだとお伝えしました。それにちょっと付け加えたいのですが、まだ余力があるようでしたら、今度は逆に、作品を遡って再読してみてください。順番は気にしなくていいです。何となく似たような作品を読み返してみてください。そうすることで、以前の作品が新しい作品の「解説本」の役割を果たすことになり、再読の面白さが病みつきになるでしょう。


だいたいにおいて、同じ作家の作品内では同じ種類のメタファーが同じような意味を持って使われるのですが、作品が進むごとにメタファーは複雑になります。複雑なものを読んだ後に簡単な表現に触れることで、「ああ、あれはこういう意味だったのか」と明確な道を発見することができるんですね。


村上春樹のような、普通のエンターテイメントではない小説を書く作家ほど再読は楽しいものです。世にある全ての小説が、さまざまな角度から読まれることに耐えうるわけではありません。時代を継がれていく物語は何度読んでも面白いものだし、こちらの変化を受け入れてくれるし、理解が一段階深まることでより深く感動を味わうこともできる。最高です。

 

 

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ある種の優れた小説や絵画、そして音楽には、作家が自ら削り取った命のカケラが練りこまれています。その、本来アートが持っている命に生の状態で触れるという経験は、もう何ものにも代え難い。おそらくこれは、人間が神から(神じゃなくてもいいけど)与えられた最大の恩恵で、私は生きているうちにこれを最大限、できる限り楽しみたいと思っています。触れたい作品はあまりに多く、自由になる時間はあまりに少ないのが問題ですけどね。


ぜひみなさんも、素敵な作品に今より深く向き合ってみてください。心の底からやってくる感動は、人生そのものを変える可能性を孕んでいます。

 

 

 


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