誰にも言えない苦しい気持ち、受け止め方を間違えないために
時として、ネガティブな感情が自分の許容量を超えることがあります。怒りや悲しみが、自分の手に負えないほど膨らむことがあります。すぐにでも忘れてしまいたいような出来事ほど、何度も何度も繰り返し思い起こされて薄れることがありません。
誰にも言えない気持ちをずっと心に抱えているのは、本当に辛いことですよね。苦しい気持ちや悲しい気持ちをいつまでも抱えていると、本来は世界に満ち溢れている光を見ることができなくなります。全てを他人のせいにして憎むか、自己嫌悪を抱えて閉じこもるしか選択肢がありません。そんなときは一体どうしたらいいのでしょうか。
わたしは無理に起き上がろうとしません。でも、自分のことは最後まで信じます。どんなに悲しい気持ちになっても、どんなに汚い自分が垣間見えても、自分を放棄しません。感情をコントロールすることもしません。無駄だからです。どれほど上手く隠せたところで、自分の内側から出てきた感情を完全に消し去ることはできません。隠せば隠すほど、その感情は弱点として成長していくことでしょう。
わたしはどんなに嫌な感情が自分の内から出てきても、それを一旦そのまま受け入れます。苦しくても気持ち悪くても、その存在を認めます。なぜ受け入れられるのかというと、それが「人間の感情」だからです。これまで創られてきた芸術作品や格言や伝記を注意深く見れば分かることですが、わたしたちが今感じていることは、全て個人的であると同時に「人間が今まで共有し、これからも共有していく感情」なのです。
どんなに汚くても馬鹿げていても、わたしたちはひとりぼっちではありません。ひとり一人がそれぞれ「個人的に」苦しまなくてはならない感情を抱えていたとしても、苦しみ自体は「共有されている」ものなのです。
「悩まなくていい」
だから、そんなことで悩まなくていいのです。生きていれば必ず、一人で苦しまなければならない場面は訪れます。それは、どうしてもひとり一人が各々受け止めなければならない感情なのです。試練といってもいいかもしれません。でも、そのことについて悩む必要はありません。この、「苦しむことと悩むことがごっちゃになっている」人がかなり多いのではないかと感じています。
「解決しようとせず、まずは認知すること」
一度湧き上がってきた感情は、抑え込むめばいつかは見えなくなるでしょう。それはあたかも消えてなくなったかのようですが、もちろんなくなったわけではありません。ただ、心の奥の引き出しにしまわれただけです。
時間がたてばどんどん奥の方に移動していくので、もう意識に上ってくることはほとんどありませんが、それでもなくなることとは違います。無意識はその存在をきちんと覚えているし、必要があればいつでもどこでも引っ張り出してくることができます。意識は完全に忘れてしまっていても、無意識は忘れることがありません。そして、人間の心は意識よりも無意識の方がはるかに大きく複雑です。
生命の維持に関わるほどショッキングな出来事であれば、防衛本能が優先されて、瞬時に心の奥底までその感情を押し込んでしまいます。そのような感情をむやみやたらに引っ張り出す必要はありません。「そのとき」が来るまで眠らせておくべきです。
でも、もしも早いうちに対処できる感情ならば、ため込むことの方が危険です。できるだけその存在を認知してください。認知するだけで大丈夫です。無理やり解決しようとしないでください。認知と解決は、また別問題です。少しくらいの痛みなら、進んで引き受けましょう。存在を認めてあげることだけで、そのマイナスの感情は和らぎます。
「血を流す覚悟が必要なときもある」
もし誰にも言えない気持ちを抱えていることが苦しくて苦しくて辛いなら、吐き出す時期を迎えているのかもしれません。勇気を出して、痛くても怖くても血を流してでも、膿を出した方がいいときがあります。
成長は、痛みを伴うことが多いです。嫌なことを全て避けて曖昧に生きることは、生の恩恵を深く享受しているとは言えないのかもしれません。あなたに汚い部分があったとしても、それはあなたの中に美しい部分がないということでは決してないのだということを忘れないでください。
吐き出した方が楽になることもあります。おそらくそれは深い傷になり、跡が残るかもしれません。でも、傷はやがてふさがり瘡蓋になります。瘡蓋はいつか剥がれ落ち、傷跡を一段薄くしてくれるでしょう。日々代謝を繰り返すことで、その傷跡はどんどん薄くなっていきます。それが感情の健全な消化なのです。
人間は生きていれば傷つくし、どうしようもなく他人を傷つける生き物です。その反面、人間は生きていれば人を救うし、どうしようもなく愛することのできる生き物です。たくさんの感情を受け入れ、たくさん傷つきたくさん愛することで、人は大きく強くなっていくのではないでしょうか。