「わたしにとってはボナールのデッサン一枚の方に価値がある」
敬愛する写真家、ソール・ライターが、ハーパーズ・バザーの編集者に放った言葉。
自分にとってはそこで働いた一年より価値がある。返答は軽蔑したような眼差し。
たった一枚の絵に筆舌尽くしがたい力が宿る。完成された油絵でも、もちろんデッサン一枚でも。
ルーベンスのデッサン一枚から来る衝撃。ルドンのデッサン一枚が持つ哀愁。
生まれ変わっても絵を愛する人生を送りたい。
人間でなかったとしても、絵のような何かを愛する心を持ちたいと思う。
心のようなものがなかったとしても、かつて絵を愛することで得られた何かを渇望する存在になりたいと願う。